上筒井六丁目から坂道を下ると春日野の終点に出ます。上と下ではかうも違ふものかと思はれるほど穢ならしい。
こゝから脇の浜はすぐ近くだ。
工場地帯であり、従つてプロレタリアの街だ。朝鮮ガールのゐるのは脇の浜や西灘で、小つぽけな怪しい家に「朝鮮料理」と看板の出てゐる家を見たならば
「ははあ、これか」と諸君の方ではうんざりするかも知れません。
こちらはだまってゐても、先様の方からどんな犠牲をも敢て辞せず―と云った工合にもさかけて来ます。
これでは面白くない。
朝鮮料理も勿論いゝ加減な喰はせものであることは云ふまでもありません。
冗談半分にでも見に出かける程の代物ではないから、白衣の人肉市場があることだけ申上げてをきます。