神戸歓楽郷案内
こんな所を、神戸歓楽郷の冐頭に持つて来ては、神戸の紳士方からドヤされるか知れないが僕のつもりでは、異国情調万点の大神戸にも、こんなインチキな歓楽郷もあるんだから、世は様々だなと云ふ事を知つて置いて貰び度い為なのである。
さて所は、三宮町の裏通り、片方が大きな建物の壁に向ひ合つた小便臭い、露地に出来た歓楽街(これは一寸誇張したる形容也)名づけて、「日の出小路」と申上げて仕舞ふと、知つてる人は、くすぐつたさうな苦笑をするし、知らぬ人は一寸好奇心をときめかサ。
この穢い小便小路に五六軒のカフェー、飲食店の様なものが出来た。又変な場所を選んだものだが、理窟は抜きにして、各々繁昌してるから妙だ。
支那そば屋の一貫楼、カフエー・ライヲツク。洋食屋の菊水などが断然押へて居る。では其のサービス振はと云ふと、くだヽ僕が云ふまでもない。暇と猟奇心を持ち合せた方々は、勇敢に一夕此の鼠小路を訪問して、其のグロテスクなサービス振を満喫して勧覧になるがよからう。